【(有)農マル園芸・(有)アグリ元気岡山 代表取締役 小川博巳(岡山県美作市)】
大学で農業経済を学び、社会福祉団体職員を経て、父から経営移譲を受けた小川博巳。胸中には思索を積み重ねた末に導き出した一つの課題—農業のノーマライゼーション—があった。その理想が結実した岡山県内の農園には、花や野菜の直売所、イチゴの摘み取り園など、多彩な施設が備えられている。来園者が思い思いの時間を過ごす園内には、エンターテイメントに昇化した、新たな農業の姿があった。
良い商品、良い顧客の良循環を生む直売所作り
高い運賃と決して安くはない値段の生産者直売のコメがなぜ売れるのだろうか。産直の購入者は単に美味しいコメを求めているわけではない。農家から直接コメを買うという関係性や農家の人柄あるいはその背景にある自然や風土に触れる満足を買っているのだ。人々は空腹を満たす食糧の供給だけではなく、癒しや自然や故郷への回帰願望を満足させることを農業に求めているのだ。
埼玉県のサイボクや三重県のもくもく手作りファームなどすでに幾つかの農業アミューズメントも存在する。また観光果樹園は果樹産地の観光名所になっている。現代という「過剰の時代」であればこそ、農業には「ファーミング・エンターテイメント」というべき新しいビジネスジャンルが存在する
小川博巳(45歳)は、花を主体に野菜の直売とイチゴの摘み取り園を兼ねた農園直売所を経営する。さらにアイスクリームやスイーツのコーナーも設け、それらが相乗効果をもたらし、良質顧客の定着を実現している。そして、自らの農業ビジネスを通して農業・農村だけでなく、教育や社会福祉への貢献ができないかと小川は考えている。(以下つづく)