ニンジン、ダイコンなど露地野菜を中心に経営する(有)松本農園(熊本県益城町:松本博美代表取締役)は、2007年5月にグローバルGAPを取得。今年4月に更新した。「欧米諸国に対するチャレンジャーとしてニッポンの農場も世界標準規格をクリアすべき」と力説する松本武取締役にリスクマネジメントの本質について語ってもらった。
グローバルGAP認証取得のきっかけは?
GAPのことは、主要取引先から時々聞いていたが、実際にどんなものか思案し続けていた。2006年春にユーレップGAP(現グローバルGAP)の事務局であるFoodplusのクリスチャン・ムーラー氏が当農場を訪れた。当社はトレーサビリティの一環として、生産時に使用した農薬・肥料などを消費者が確認できる生産情報公表JAS規格(農産物)を2005年に取得し、管理をしてきた。その内容を紹介するといたく感心し、最後に「ユーレップGAPを取得してください」と言われた。こちらもつい「任せて下さい」と言ってしまったが、それでも07年5月7日付けで認証を取得。審査の2日前に審査機関であるSGSジャパン(株)で受けた講習が非常に役に立った。GAPというとマニュアルや記録付けに目を向けがちだが、その奥にある本質がわかり、「目からうろこ」でした。
GAPの本質とは?
GAPが求めているものは、基本的にはHACCP(ハサップ)と同じと考えています。組織がリスクマネジメントをどこまで考えているのか、そのリスクを最小限にとどめるために何をするかということだと思います。たとえば、GAPに「救急箱を常備しているか?」といった主旨の要求項目がある。これに対し、農場の近くに病院がある経営者は、「何か起これば病院に駆け付けられるので救急箱は必要ない」と答えるかもしれない。だが、病院は24時間必ず開いているわけではない。仮に24時間開いているとしても、GAPが求めていることは「従業員の応急処置をその組織がどの範囲まで考慮しているか」だ。それを踏まえると「病院が近いから(救急箱は)要らない」という答えは適当ではない。審査員は救急箱のことを聞いているのではなく、組織がどこまでリスクを考えているかを聞いているのだから。(以下つづく)
世界70カ国の約5万農場が認証を取得するまで成長したユーレップGAP。農場管理における事実上の世界スタンダードになっている。我が国では日本版GAP(JGAP)の普及が始まったばかり。本誌では、農場の経営管理手法そして国際競争に生き残るための規範として、GAPに注目。世界の動き、日本での進展を毎月報告する。レポートはジャーナリストの青山浩子氏。 -
profile