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時流 | 食料自給率向上の罠

「自給率向上」から「儲かる専業農家増」へ
この指標転換で農業はずっとよくなる。 | 農業経営者 5月号 |  (2009/05/01)

来年、5年に1度の改定を迎える「食料・農業・農村基本計画」。自給率50%を目指す方向で議論が進む。計画倒れになることは火を見るより明らかだ。日本の「食料・農業・農村白書」に相当する英国の「農業報告書2007」の内容から、日本の農業政策を叩き直す突破口を見い出した。

自給率・自給力向上といった農業政策を真っ向から否定する英国政府の見解について2回に渡って解説した。では英国政府は一体、何をもって“いい農業”と評価し、どんな役割を農業に求めているのか。日本の「食料・農業・農村白書」に相当する英国の「農業報告書2007」から読み取っていこう。

英国農業政策の成功指標は“儲かる”専業農家増



 第一章は、「農業収入」。農業を専業で仕事にする国民が儲かっているかどうかだ。一番大事で、皆が知りたいことから始まっていて分かりやすい。専業農業者の現金収入はいくらか。農場の売上と利益はいくらか。儲かっている人と儲かっていない人の差はどれくらいか。過去と比べてどうか。経営品目別にみるとどうか。近い将来、いくらになりそうか。ほかのEU諸国と比べて、多いか少ないか。なぜそうなのか。以上が書いてある。儲けの差がなぜ起こるのかについても、「生産性の差だ」と身も蓋もないご名答が明記してあるのは、読んでいて気持ちがいい。

次に国全体で農業がどれだけ収入をもたらしているか。農業が生み出した総生産が、国全体のGDPにどれだけ貢献しているか。雇用にどれだけ寄与しているか。専業農業従事者1人当たりの付加価値(労働生産性)は上がっているか。下がっているか。地域経済にいくら貢献しているのかを記してある。

こうした数値をより正確にはじき出すのに、統計上の改善についても触れてある。従来の農業収入統計は純粋に農産物の生産額をもとにしていた。しかし、現実の農場経営はもっと多様化している。農産加工業に加え、農場資源を使った観光スポット、レジャー施設の利用売上などだ。これも農業収入として換算する必要があると説明している。

(以下つづく)

>>農水捏造 食料自給率向上の罠 全記事公開


浅川芳裕blog
※記事全文は農業経営者05月号で
Posted by 編集部 | 12:29 | この記事のURL | コメント(392) | トラックバック(0)
時流 | 土門「辛」聞

支離滅裂の自民党農政族「減反強化方針」 | 農業経営者 5月号 |  (2009/05/01)

【土門 剛 -profile

減反強化で農家の農協離れを誘発



石破茂農水相の「減反見直し」発言に、自民党農政族が猛反発している。その「理論的支柱」は、いまや農政族の幹部クラスにのし上がった農業政策基本委員会の西川公也委員長。最近、「理論」の集大成を党の機関誌に連載(3回)してこられた。さすが学究の道(東京農工大・大学院卒)にも進まれただけあって、タイトルも「農業政策講座」。中身は羊頭狗肉。選挙前とあってか、単なる政党のプロパガンダでしかない。

本論の前に、「減反見直し」発言についての総括を改めてご披露しておきたい。これを打ち出した石破農水相の本意は、米価を国際水準近くにまで下げて、コメの需要拡大につなげ、日本のコメに「元気」を注入、生産者には米価下落分を経営安定対策で埋めようというものであろう。

これは水田の潜在的な生産力に着目した至極真っ当な政策である。少々粗っぽく説明すれば、米価を国際水準価格近くにまで近づけてコスト競争力を増せば、コメの需要は飼料用米や米粉など新たな需要や、加工用の需要も増えるであろうと考えたのである。マーケットのメカニズムを正しく理解した考えで、筆者も大賛成。

小学生でも分かるのは、国際水準価格近くにまで近づければ、年間80万tに達したミニマム・アクセス(MA)米の扱いも整理ができる。それだけでも減反緩和の一助になると期待できる。いずれWTO農業交渉も決着する。かりに低率関税受諾という展開になれば、減反制度が従来のままというわけには参らない。

それはそれとして、減反面積の上積みはこれ以上無理。これ以上強制的に農家に割り当てれば農家の猛反発を喰らうだけ。その矛先は政治と行政と農協に向かうことは火を見るより明らか。早晩、「減反見直し」発言は避けられないのである。

西川センセーほどのインテリが、これに反対するのは解せない。手を変え品を変え従来の減反手法を続けても、米価を維持することは不可能なことがご理解頂けないのは残念。それよりも日本のコメが競争力をなくし、若い農業後継者も育てることができなかったことをいかにお考えか。農協も減反強化と同じペースですっかり元気をなくしてしまった。

「減反見直し」発言に西川センセーが猛反対する理由。懸命なる読者諸兄は何となくお分かりだろう。「減反見直し」発言の前提に「選択減反制」導入があり、これに農協組織が猛反対していて、西川センセーはそれを忠実に代弁しただけの話。

(以下つづく)
※記事全文は農業経営者05月号で
Posted by 編集部 | 09:28 | この記事のURL | コメント(344) | トラックバック(0)
時流 | 食料自給率向上の罠

日本の自給率向上政策のお手本
英国の自給率が15%下落していた! | 農業経営者 4月号 |  (2009/04/01)

国は教科書を使い、英国と比べ「低い自給率」「弱い農業」「来るべき食料危機」を事実として小学生に教える。実は英国の自給率(金額ベース)は下がり日本より低い。当の英国政府は、自給率と食料安全保障は、農業発展には関係ないと一刀両断。農水省の発表と完全に矛盾する。どちらが本当なのか。

自給率の教科書掲載で農業自虐史観を植え付け



小学校の社会科教科書では農水省が英国を自給率のお手本としていることを前提に、日本の自給率下降と英国の上昇を比較した(図1、図2)、こんな記述がみられる。

「日本以外の国は高いね。日本はどうしたのかな」「わたしたちの食べ物はどうなっていくのかな」「こんなに外国の食べ物にたよっていて、外国が不作になったら日本はどうなるのだろう」「わたしたちのくらしにとって食料自給率は、解決しなければならない問題になってきています」「農家や消費者を守るこれからの食料生産は、どのように進めていったらいいのでしょうか」(「東京書籍」「光村図書」の小学5年社会科教科書から抜粋)。

農水省は「英国の食料自給率が向上した理由を教えてください」という小学生からの質問をホームページに掲載し、こう答えている。

「2度の世界大戦で深刻な食料不足に陥った経験から、英国民の間に『食料は国内生産でまかなうことが重要』との認識が醸成され、これに基づいた農業施策が推進されてきたからです」(一部抜粋) しかし、当の英国政府はまったく違うことを言っている。食料自給率向上を国策にしない根拠は前号で紹介したとおりだ。自給率と食料安全保障を混同することは見当違いで、人工的に向上させようとすると農業の産業化や持続性、環境への負荷、国民の福祉、途上国の発展にとって害が大き過ぎるという結論だった。

教科書に自給率の記載があることは聞いていたが、ここまでひどいとは思っていなかった。低い自給率を引き合いに、小学生に日本農業の弱さを植付ける。輸入停止の可能性を示し、危機感を煽る。もっと低かった英国での向上成功を引き合いに、自給率は公的に解決すべき問題であると位置づける。そのために、弱い農家はただ守らなければならない存在であることを強調する。そして、今後の方向性は何も示さず、一抹の不安感だけを漂わせて終わり! 国の農業に対する自虐史観が詰まっている。取り上げた教科書はシェアの高い2社のものだが、全出版社で同様の記述がみられ、農水省による学習指導要領への周到な関与が伺える。
(以下つづく)

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Posted by 編集部 | 12:29 | この記事のURL | コメント(176) | トラックバック(0)